癌について

癌とは?

体の細胞が勝手に増殖してできたかたまりは、まとめて腫瘍と呼ばれます。
腫瘍には、良性の腫瘍と悪性 の腫瘍があります。悪性腫瘍は、細胞の性質によって癌と肉腫とに分けられますが、一般的には悪性腫瘍 のことを癌と呼んでいます (※1)。悪性腫瘍の細胞は、もともと私たち自身の細胞からできたものです。

その意味からは身内の細胞ですが、少々できそこないの細胞といえます。正常な細胞は、いわばきちんとした体の設計図ともいうべき一定のルールのもとに増えていき、決まった自分の役割を果たします。それに対して、癌細胞はもともと私たちの体の細胞からできたにもかかわらず、正常細胞が守っている体のルールをまったく守らないのです。まず、癌細胞は勝手にふえていきます。それも普通の細胞がふえるのより、はるかに速いスピードでふえていきます。その結果、大きなかたまりとなり、健康な組織を圧迫します。また、ふえかたにルールがないので、健康な組織にもどんどん侵入していき、健康な組織を傷害します。

さらに、その部位だけにとどまってふえるのではなく、流れ出た癌細胞は、血液の流れやリンパ液の流れに乗って、他の臓器に行き、そこでまた勝手に、しかも速いスピードでふえていきます。したがって癌細胞を放置しておくと、正常な細胞がやられ、正常な働きがまったくできなくなってしまいます。

(※1)癌の病理
腫瘍とは、ある1個の細胞が細胞分裂の歯止めがかからなくなり、勝手に分裂増殖(自律性増殖)した結果、しこりを作ってくる状態をいいます。体の細胞は上皮性の細胞と非上皮性の細胞に別れます。生殖細胞はどちらの性質も併せ持つのですが、どちらかというと上皮性に分類されます。
●上皮性組織の例:表皮、消化管粘膜、肝、膵、腎臓、甲状腺、乳腺、卵巣など。
●非上皮性の組織の例:骨、筋肉、血管、神経、血液細胞など。上皮性組織から出た悪性腫瘍を『癌』、非上皮性組織から出た悪性腫瘍を『肉腫』といいます。

腫瘍細胞が免疫攻撃をのがれる戦術

1)腫瘍細胞の性格を変える
腫瘍細胞は免疫系の攻撃にあうと、抗原のない変異細胞を作る。
抗原は、T細胞やその他の殺し屋細胞、抗体の攻撃の目印となる物質である。この免疫選択と呼ばれる過程は、腫瘍抗原や、免疫細胞に腫瘍抗原を提示する腫瘍組織適合性抗原(MHC)をもたない腫瘍細胞を誘導することができる。腫瘍細胞はまた、T細胞を活性化する共刺激伝達因子や、-インターフェロンのようなサイトカインに反応するのに必要なシグナル分子、つまり免疫機構による腫瘍細胞損害を促進する分子をもたなくすることもできる。

2)免疫細胞を抑制する
腫瘍細胞は自分に対する有効な免疫反応を消失させたり、無効にさせたり変化を宿主に起こさせる。腫瘍細胞がT細胞へ不適切なシグナルを伝えると、T細胞の数が減ったり、反応能力が落ちたりして、腫瘍細胞に特異的な免疫抑制が起こる。腫瘍細胞が作り出すTGF-のような物質や治療に使う抗がん剤、放射線などは、非特異的な免疫抑制状態を起こさせることもある。

3)免疫反応から身を隠す
免疫反応はいくつかの体の部位、たとえば脳のような部位では効力が低いか、あるいは欠除している。したがってそのような部位にある腫瘍細胞は免疫攻撃から逃れてしまう。同様に結合組織からなるぶ厚い間質は腫瘍を免疫系の認識および破壊から守っている。

4)免疫系の無視を利用する
腫瘍細胞は免疫反応を引き起こすことなしに増殖することができる。しかし腫瘍抗原で免疫することによって、効果的な免疫反応が誘導される。
このことは免疫攻撃の能力は常に活性化されていないことを示している。

5)免疫反応のペースを超える
腫瘍細胞は免疫反応がその増殖をチェックできない早さで増えることができる。
癌の治療には、現在のところ、できるだけ早い時期に「手術」してとってしまおうというのが一般的な考え方です。
手術の方法にはお腹を切って開けることなく手術する内視鏡下での手術や、また、腹部に3ヶ所くらい穴をあけひとつの穴から腹腔鏡を入れて、癌を見ながら、ほかの穴から手術器具を入れて、手術する腹腔鏡下での手術もさかんに行われるようになりました。手術の他に「放射線療法」とうまく組み合わせたり、「ホルモン剤」を利用して治療したり再発防止をすることも行われるようになっています。
その他に、新しい考え方として、自分のリンパ球に自分の癌をやっつけさせようという「免疫療法」も行われています。つぎに抗癌剤です。抗癌剤は癌細胞の特色を利用して〔健康な細胞にくらべて、はるかに速くふえていくという事です。〕細胞分裂を妨害する作用をもった薬が、癌の治療に用いられることになります。
このような作用をもった薬を投与しますと、きわめて速く細胞分裂をくりかえす癌細胞は、細胞分裂が妨害されて死にます。しかし服用中には脱毛、白血球の減少、出血などの副作用があります。