高血圧について

高血圧の原因

 

高血圧の患者は大変多いのですが、実はほとんどの患者で、その原因ははっきりとは分かっていません。このように、現在の医学検査で血圧が上昇する明らかな原因が見つからない高血圧を本態性高血圧と呼び、高血圧の95%以上を占めています。一方、残りの数%の患者では検査の結果、血圧を上げる原因が見つかり、このような高血圧を二次性あるいは症候性高血圧と呼びます。

1.本態性高血圧

遺伝的素因と日常生活上の不摂生(塩分の過剰摂取、ストレス、運動不足、アルコール、肥満など)以外に高血圧の原因が見つからない場合、本態性高血圧と呼ばれます。高血圧の患者の95%以上がこの本態性高血圧です。一般的に、両親とも本態性高血圧の場合、子供の約半数は本態性高血圧になります。ですから、ふつう遺伝的素因と日常生活上の不摂生はこの高血圧の発症にそれぞれおよそ半分ずつ寄与していると考えられます。ただ、これには個人差が大きく、遺伝的素因の関与が圧倒的に大きい患者もあれば、逆に日常生活の関与が大きくライフスタイルの改善だけで血圧が完全に正常化する患者もいます。

一般に血圧は年齢とともに上昇し、また、先に上げた日常生活の不摂生も増えてくるので、このタイプの高血圧は一般に中年以降に発症することが多く、糖尿病やその一歩手前である耐糖能障害、あるいは高脂血症・脂質代謝異常、肥満などの成人病を伴いやすいことが知られています。

本態性高血圧の患者では血圧が高くない方に比べ、糖尿病を合併する頻度が2倍ほど高いことが知られています。また、逆に、糖尿病患者では糖尿病でない方に比べ、高血圧を合併する頻度がやはり2倍程度高いのです。これらのことから、本態性高血圧の遺伝的素因と糖尿病の遺伝的素因は一部では共通していると考えられるようになってきました。また、これらの素因は高脂血症・脂質代謝異常および肥満の素因とも共通している可能性が指摘されています。さらに、運動不足などの日常生活上の不摂生はこれらの成人病のいずれも引き起こす可能性があります。実際、あなたやその身の回りにもこれらの複数の成人病が当てはまる方が何人かおられると思います。ただ、これらの成人病をいくつか合併している患者では、高血圧、糖尿病、高脂血症などそれぞれの成人病の程度はあまりひどくないのがふつうです。そのため、健康診断などでも「要注意」に止まり、必ずしも「要医療」と指摘されないこともあります。しかし、軽症でもこれらの成人病を複数併せ持つことは大変危険で、心筋梗塞や脳卒中の危険性が何倍も高まっているのです。このため、これらの成人病を併せ持つ場合「X症候群」や「死の四重奏」と呼ばれ大変恐れられています。

2.二次性(症候性)高血圧現在の医学検査で血圧を上げる明らかな異常(病気)が見つかる場合二次性(症候性)高血圧と呼ばれます。

1) 腎性高血圧糸球体腎炎、慢性腎盂腎炎、嚢胞腎などで腎臓全体の働きが低下すると、塩分(ナトリウム)や水分を排泄する腎臓の機能が低下し血圧が上昇します。また、腎臓に血液を供給する血管(腎動脈)が動脈硬化や、生まれつきの血管の異常また動脈の炎症などで狭くなると、腎臓から血圧を上げる物質(レニン)が放出され高血圧となります。この結果、腎臓にはしっかりと血液が流れるようになりますが、その他の臓器では血圧が高すぎる状態となります。

2) 内分泌性高血圧ホルモンは血液中を流れて全身の臓器に達し、各臓器の様々な機能を調節する重要な物質の総称です。このホルモンのなかには、心臓、血管、腎臓などに作用し血圧を維持し重要な臓器にしっかりと血液を流し立ちくらみなどを防ぐ働きを持つものも何種類かあります。しかし、これらの血圧上昇ホルモンが過剰に分泌されてしまうと高血圧となってしまいます。 代表的な病気として、腎臓に作用し塩分(ナトリウム)・水分を身体にためることで血圧を維持するアルドステロンというホルモンが過剰に分泌され高血圧となる原発性アルドステロン症や、心臓や血管に作用し血圧を上昇させるカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)というホルモンが過剰に分泌され高血圧となる褐色細胞腫などがあります。ただ、本態性高血圧と異なり、これらの病気は手術などで比較的簡単に治癒させることができます。

(以上 健康倶楽部 http://www.nagara.com/ より一部抜粋引用)

高血圧治療ガイドライン2000 2000年9月

このたび、日本高血圧学会が中心となり高血圧治療のガイドラインが作成され、7月に発表されました。基本的には99年のWHOのガイドラインに従ったものですが、なるべく日本人の実態に即したものになるように、高齢者の高血圧治療に重点のひとつをおいています。このガイドラインはわが国をはじめとする世界中の研究成果に基づいて作成されたもので、数多くの実際の症例で確かめられた証拠に基づくものです。A4版で125ページにわたる膨大なものですが、一部をご紹介します。

血圧値の分類

医療機関で測定した血圧の分類は表1のとおりです。

表1 血圧値の分類

分類 最大(収縮期)血圧 最小(拡張期)血圧
至適血圧 120未満 かつ 80未満