免疫について

免疫とは何か?

免疫とは、よく「自然治癒力」などと表現されますが、一体免疫とはなんでしょうか?免疫とは「生体防御」の仕組みと捉えることが出来ます。私たちのからだでは日々生体防御機能が働いていて、その人本来に備わっている恒常性を維持しようと懸命に各器官が働いています。 私たちのからだは、約60兆個の細胞の集まりでできていると言われています。この中には、細菌やウイルス、ガン細胞などから生命を守るための免疫系の細胞(以下免疫細胞)があり、体重60キログラムの人で約5千億個(!)重さにして約4kg(!!)の免疫細胞の防衛軍が全身に配置しています。彼らの生まれ故郷は「骨髄(骨髄幹細胞)」で、全てそこで原形が生産されます。その後様々な器官で教育・訓練を受け、成長し、それぞれの役割を担った免疫細胞となります。特に胸腺は、主力部隊でかつエリート中のエリートである「T細胞」を訓練・教育する器官として重要ですが、残念ながら年齢とともに萎縮していってしまいます。

 

機能 機能内容
生体防御機能 除去 内部より発生した異物の除去 NK細胞によるガン細胞攻撃
外部より進入した異物の除去 免疫系(免疫細胞)の働き・局所免疫による除去
修復 局所免疫の修復・ 傷ついた正常細胞の修復 傷ついた皮膚の修復
再生 死んだ細胞を補填する機能 細胞の新陳代謝
伝達 細胞間を行き来する 伝達物質や電気信号 サイトカイン・神経を伝わる電気信号
管理 生体防御機能をトータルで管理する機能 脳による症状の具現化(警報機能)

 

それぞれに作用する器官は重複し、複合的に機能することによって免疫を維持していると考えられます。例えば免疫系に属する細胞(リンパ球・免疫細胞)は実際に物理的に異物を攻撃し除去しますが、それには連絡手段としての「伝達物質(インターフェロン・インターロイキンなど)」が欠かせません。またその伝達物質は脳にも働きかけ、意識レベルで「病気にかかっている」ことをあらわす様々な症状(発熱など)を引き起こします。

また、皮膚に損傷が出来た場合、血液によって白血球が運ばれ異物を除去すると同時に血液中の成分がかさぶたを構成し、異物の進入をシャットアウトします。また、脳には「痛い」という信号が神経を伝わり、その損傷部分を保護するよう脳に働きかけるのです。

もし痛いと言う感情がなければ、あちこち傷だらけになり異物が進入しつづけ免疫系では処理できない状態になり、病気にかかり、死んでしまうことでしょう。 このように免疫とはからだ中の全ての器官・細胞がスクラムを組んで実現していると考えられます。

さて、ここで代表的な例を取って、免疫細胞防衛軍がどのような働きをしているのか見てみましょう(注釈※付いては、下表を参照して下さい)。

 いまここにウィルスや細胞が、様々な防御網(※1)を潜り抜け、あなたのからだの中に入ってきたことにしましょう。

 かれらは、直接私たちの正常な細胞を攻撃したり、毒素を排出して細胞を傷つけたりといろいろな悪さをします。われら「免疫防衛軍」がそれを見逃すはずがありません。

まず最初に、異物に対して攻撃をしかけるのは「好中球(※2)」と呼ばれる歩兵隊と、将校の「マクロファージ(※2)」です。

 好中球は異物を食べて限界に達すると自滅して「肉を切らせて骨を絶つ」的な攻撃を行います。しかし彼らだけでは「悪さをする連中」に太刀打ちできません。

そこで将校のマクロファージも前線に出て好中球と一緒に相手の息の根を止める(食べてしまう)のですが、マクロファージの食作用(※2)は好中球の比ではなく、さらに将校なりの役割を持っています。 マクロファージは「悪さをする連中」をその触手で次々と捉え、食べて細かく(活性酸素を使います)し、そして表面に更なる応援を頼む旗(※3)を立てます。この「旗」が重要なのです。

 

私たちの体は実に様々な器官・細胞たちによって守られています。 そのうち、細胞レベルで免疫機能の役割を負うのは主に「白血球」 です。その白血球には以下の種類があります。
白 血 球 血 球 系 顆 粒 球 好中球 顆粒球のうち標本を作る時染色した時の原形質の顆粒の染まり具合が中性で染まるものを言い、「食作用」をもつ白血球。異物が侵入すると先兵としてまず攻撃をしかける役目を持っています。但し寿命は短くその期間は6時間と言われています。
好酸球 顆粒球のうち標本を作る時染色した時の原形質の顆粒の染まり具合が酸性で染まるものを言います。
好塩基球 顆粒球のうち標本を作る時染色した時の原形質の顆粒の染まり具合が塩基性色素で染まるものを言います。抗体ととの相互作用でヒスタミンなどの物質を放出します。
単 球 マクロファージ (大食細胞) リンフォカインを含む種々の活性化物質(細胞戦争で言うところの伝令役)をつくりT細胞を活性化する一方で、異物を取りこんで食べてしまう細胞。免疫系では非常に重要な役割(抗原提示など)を持っています。軍隊で言えば前線で活躍する将校のようなものでしょうか。
リ ン パ 球 系 リ ン パ 球 B細胞 異物に対して「抗体」という武器(ミサイルのようなもの)を生産します。しかも戦場の時間の経過に応じて武器の種類も変えてきます。
K細胞 NK細胞とはある特徴(戦う相手と結合するものを持っている点)があることで異なりますが、作用的にはNK細胞と同じ働きをします。
T 細 胞 ヘルパー T細胞 リンパ球の作戦参謀役を担う重要な役割を持っています。厳密に言うと2種類(Th1・Th2)あります。それぞれ「キラーT細胞への伝達」「B細胞への伝達」を担っています。
サプレッサー T細胞 (人間的に言えば)実にクールなT細胞で、攻撃のやりすぎ(=武器の作りすぎ)を抑制(サプレッション)します。
キラー T細胞 組織だって異物を攻撃します。T細胞の主力攻撃部隊。
ナチュラルキラー (NK)細胞 あるガン細胞やウイルスに感染してしまった細胞に攻撃を加える正常なリンパ球の総称。常に体内をパトロールし異物を攻撃しますが、T細胞のように「組織の論理」に捕らわれないかわりに、異物を厳密に認識する「鑑識眼]は持っていません。