肝臓

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肝臓に関する疾患について

代表的な疾患

中国漢方では、春には肝臓に関する体調不良が多くなるから注意するように、という教えがあるといいます。旧暦でいえば春は1~3月のこと。年末年始に無理をした方にとっては身に憶えのあることではないでしょうか?
肝臓は多少の不調では、自らそれを訴えることは無く、そのため「沈黙の臓器」といわれ、重症化するまでは自覚症状の現れないケースが多くあります。

代表的な肝臓疾患

肝炎

肝炎とは、まさに肝臓に炎症が起こった状態で、赤く腫れて熱を持ち、触ると痛みを感じます。単に「肝炎」という場合、ウイルス性肝炎(日本人の肝炎の約80%に及ぶ)を指しますが、その他に肝炎を起こす原因としては薬剤やアルコール、アレルギー等があります。慢性肝炎は、少なくとも半年は続き、急性肝炎よりはずっと少ないものの、何年間も、時には数十年持続することがあります。それは通常、きわめて軽度なもので、何らかの症状は表れませんが、一部では、炎症がゆっくりと肝臓を損傷し、肝硬変と肝不全に至ります。

肝硬変

肝臓の炎症が繰り返されていくうちに肝臓が硬くなって萎縮し(線維化。線維化は肝細胞の壊死や損傷に対しての反応で、非常に多くの因子によって起きます。)、代謝や解毒など肝臓本来の働きが充分にできなくなってしまう病気です。原因としては、肝炎ウイルス(特にC型。全体の約70%)、アルコール多飲によるもの(約20%)がほとんどです。症状は通常、初期の段階では、はっきりした自覚症状はありません。「代償能」という機能があるからで、一部に障害が起きても、残りの部分がそれをカバーするという機能です。自覚症状のない状態を「代償期肝硬変」、症状のでてきた状態を「非代償期肝硬変」といいます。 後者になると、全身における倦怠感や疲労感、食欲がなくなるといった症状がでてきます。さらには、肝機能が落ちることで、黄疸や腹水などの様々な他覚症状が現れます。


「沈黙の臓器」:肝臓

肝ガン

肝臓には転位してきたガンがよく発生しますが、そうではなく最初から肝臓にできたガンを「原発性肝臓ガン」といいます。慢性肝炎や肝硬変から進行することが多いとされています。症状は早期の時点ではほとんどなく、進行すると肝硬変と同様、倦怠感や疲労感、食欲がなくなる、黄疸、腹水といった症状が表れます。最近では早期のガンでもみつけることが可能になってきており、自覚症状のあるなしに係わらず、慢性肝炎や肝硬変のある人は定期的な検査を受ける必要があります。肝臓ガンの死亡率は増加してきており、特に男性にその傾向が著しい。

肝不全

非代償性肝硬変に陥ると肝臓の機能が十分に働かないことにより、全身に様々な症状が出てきます。この症状を肝不全といいます。腹水、浮腫、消化管出血、黄疸肝性脳症といった症状が表れます。

ウイルス性肝炎

肝炎は通常、A、B、C、D、そしてEの5つの肝炎ウイルスの一つによって発症します。ウイルス以外の主な原因としてはアルコールと薬物がある。肝炎は急性と慢性があり、肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、重症化するまでは自覚症状の現れないケースが多くあります。

1.A型肝炎ウイルス

ウィルスに汚染された飲食物をとることで感染します。予防策としては、加熱した飲食物をとることで、かなり防げますが、食器などが汚染されている場合もありますので、注意を払う必要があります。このような伝播は、通常、衛生状態が悪い発展途上国に見られます。A型肝炎感染の大半は、何の症状もなく、認識されないままのケースが多い。

2.B型肝炎ウイルス

ウィルスで汚染された唾液、精液、血液が、皮膚や粘膜を通ることで引き起こされる。あるいは、B型肝炎ウィルスに感染した患者の血液あるいは血液製剤を輸血されることで引き起こされることもあります。発展途上国で医学的治療や歯科治療を行う海外旅行者、あるいは、性的交渉を行う旅行者は、この病気にかかる危険性がある。

3.C型肝炎ウイルス

主に感染している人の血液が他の人の血液内に入ることによって感染します。最も一般的な感染経路は、注射の針を共有することです。健康である人の中にも、少数ではありますが、C型肝炎ウイルスの慢性的キャリアがいると言われています。

4.D型肝炎ウイルス

B型肝炎ウイルスとの同時感染として起こり、そしてそれはB型肝炎の症状をさらに悪化させます。薬物依存者は比較的感染率が高いとされます。

5.E型肝炎ウイルス

時折流行を引き起こしますが、それらはA型肝炎ウイルスのそれに似ていて、これまでのところ、これらの流行は発展途上国でのみ生じています。

※予防

A型、E型の予防には基本的に手洗い、飲食物の加熱が有効です。日本人の大半はA型肝炎ウイルスに対する抗体がないので、途上国などの流行地に出かける人はワクチンを接種することをおすすめします。B型肝炎では、母子感染の予防策としてキャリア母からの新生児にワクチンの投与が行われます。成人の感染では性感染、医療行為などがあり、ワクチンが有効である。C型肝炎では医療行為などが原因となるものの、血液製剤のスクリーニング以外に有効な予防法はなく、D型肝炎では性感染などに注意が必要で、場合によりワクチンが有効です。

アルコールと肝臓

アルコールは、摂取後、胃腸から容易に吸収され、90%以上は肝臓内の酵素の働きで酸化されます。その過程でアセトアルデヒドを生成し、それはさらに酸化されて酢酸になり、二酸化炭素と水に分解されて無毒化されます。

お酒を飲み過ぎると、肝臓が働き過ぎの状態になり、栄養分を上手に処理することができなくなってしまいます。その結果、肝臓に脂肪が必要以上にどんどん増えてしまい、脂肪肝になってしまいます。 正常な肝臓には、その重さの2~3%くらいの脂肪がありますが、これが10%以上になった場合が脂肪肝とされます。 脂肪肝とは、肝臓に脂肪が蓄積している状態で、ひどくなると、肝臓の働きが損なわれます。原因の多くは肥満です。胃や腸などは、異常を自覚しやすい臓器であるのに対し、肝臓は我慢強い為、なかなか気付きにくく、肝臓の半分が脂肪で覆われても、ほとんど自覚症状がないのが脂肪肝。アルコール性脂肪肝の場合に全身のだるさ、食欲不振などがあるほかには、特に症状は出ないのが普通です。 ほとんどは健康診断の際、血液による肝機能検査や超音波検査で偶然に発見されます。アルコール性の場合を除いては肝硬変に進むことはまずありません。 しかし、肝臓でうまく処理できなかった脂肪の燃えかすが、血液に流れ出るようになると、血栓が出来やすくなり動脈硬化を引き起こしてしまいます。

アルコールは体内に貯蔵できないため、肝臓で代謝されなければなりません。アルコールと肝臓は、いわば切っても切れない密接な関係にあるわけで、酒の上手な飲み方とは、肝臓をいためずに酒を楽しむ方法ということにもなります。消化のいい蛋白質が理想的な酒の肴とされています。